2021/07/08

日本ユニセフ協会職員
翻訳者

大学院文学研究科/2010年

2021/06/24 時点

プロフィール

新潟市生まれ。2010年、文学研究科修士課程修了。東京と愛媛の高校で英語を教え、2013年〜2014年、JICAボランティアとしてベナン共和国で活動。帰国後、JICA新潟県国際協力推進員を務める。2017年〜18年、エディンバラ大学大学院へ留学し、翻訳学研究修士課程修了。帰国後、JICE(日本国際協力センター)にて国際交流事業に携わり、2019年より日本ユニセフ協会に勤務。訳書に、『時間』(共訳、みすず書房、2020年)、『めぐりめぐる』(ポリフォニープレス、2021年)。


メッセージ

今年、初めての翻訳絵本を出版いただきました。駆け出しの私は、子どもの本の翻訳をつづけていくにはどうしたらよいだろうかと模索しているところです。

恩師が卒業する私たちへはなむけにくださった言葉の中で、「学問は目的が大事」とおっしゃっていたのが心に残っています。学生にとっては、なぜ学ぶのか。社会人にとっては、学びをどのように活かすのか。大学時代、平和や子どもの本の活動をされていた恩師のおかげで、いろいろなかたちで学びを深める機会にめぐまれました。各分野で、平和や子どもたちのために活躍されている方々にも出会うことができました。私自身もさまざまな経験をして、平和な世界を子どもたちへ手渡したいという想いが強くあることに気付き、これが私の「目的」なのかなと感じています。

私は、「面白い」や「好き」という気持ちも大事だと思っています。大学に入って嬉しかったのは、興味のあることを自分次第でいくらでも深めることができる環境でした。私は文学や翻訳を学ぶなかで言葉ととことん向き合い、作品や言葉と対話するその過程に面白さを感じました。それは、私にとって新たな自分の一面でもありました。しかし、小学生の時に気に入って繰り返し読んでいた作品は、別の訳者だと好きになれなかったり、中学生の時は殻に閉じこもりがちだったので、本を読んであたたかい気持ちになれたり、心が弾んだり、一歩外から自分を眺められたり。そんな体験があったことを思い出しました。それで、実は物語や言葉との親密な対話が、子どもの頃からあったことに気付き、好きという気持ちが言葉の世界に根を下ろしました。

私は、草木染めやお蚕さんをします。草は、たとえば同じヨモギでも春先と初夏などの時期、土や陽あたりなどの生育環境によって出る色が変わります。また、お蚕さんは同じタイミングで卵から孵っても、脱皮が早い子、遅い子、身体がなかなか大きくならない子もいて個体によってさまざまです。そんな生きものたちのいとなみに触れていると、それぞれが与えられた「一生」を自分のリズムを刻みながら、そして互いに関係しながら生きていることに気付かされます。思うようにいかないこともありますが、それでも自分の軸さえあれば、道は拓けてくると信じています。

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