2024/04/01


映画字幕翻訳者

英文学科/1959年

2024/04/01 時点

プロフィール

東京都出身。津田塾大学英文学科卒。
好きな映画と英語を生かせる職業、字幕づくりを志すが門は狭く、短期間のOL生活や、フリーの翻訳種々をしながらチャンスを待つ。1970年にようやく「野生の少年」「小さな約束」などの字幕を担当。さらに10年近い下積みを経て、1980年の話題作「地獄の黙示録」で、本格的なプロとなり、以来、1500本以上の作品を手がけている。
来日する映画人の通訳も依頼され、長年の友人も多い。
主なる作品 「E.T.」「コーラスライン」「フィールド・オブ・ドリームス」「フォレスト・ガンプ」「タイタニック」「ラスト・サムライ」「ミッション・インポッシブル・シリーズ」


メッセージ

津田梅子先生は「英語教育者の育成」ということを掲げて本校を創設され、その遺志を継ぐあまたの卒業生を輩出した校史のなかにあって、映画の道に入ってしまった私は、けだし「はぐれ者」だろう。

在校中、確かに単位を取るだけの授業には出ていたが、それ以外の時間はほとんど映画館に入り浸っていた4年間だったように思う。当時は同学年の大半が寮生で、私のような通学生はひと握り。通学に時間がかかるので、友人関係を築いたり、部活をする余裕がなく「学生時代を謳歌する」ことにはまったく無縁の生徒だった。

だが授業そのものからは多くのものを得た。英語の基礎を身につけたことは言うに及ばず、「人にどう思われようとも、自分が望む道を選び、毅然と生きてゆく」という、私の生きる基盤となる尊い教えを学んだ。

志した映画翻訳の道は険しく、それが叶うまでに卒業後20年という歳月を要したのだが、その教えがあったからこそ、一度たりともブレることなく、「初志貫徹」(!)ができたのだと思う。

卒業以来、はや半世紀。その間、この世界に起こった変革は言葉では言い尽くせない。「先人の背を見て前に進む」という時代は失われた。今を生きる若い方々が直面している試練は、私の時代のそれと次元を異にしている。周囲から襲いかかってくる雑音。あまりにも多い選択肢。自分というものを、よほどクリアーに理解し、見つめていないと、迷路に落ち込むことになる。

だが一歩、踏みとどまって考えれば、世の中でどう変わろうと、赤裸な人間そのものは不変である。喜び、愛し、悲しみ、憎む。太古の人間と同じだ。「自分を知り、自らが選んだ道を貫く」ことが、いつの時代であれ「正解」なのだ。

早く生まれたというだけの先輩ではあるが、厳しい社会に飛び出す前に、長い人生の方向を決めたのは、あらゆる意味で学生時代だった。その貴重な時間をムダにしてはならないというアドバイスはできる。

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