- 究
- 調
2022/08/15
長野 明子
静岡県立大学・大学院
国際関係学研究科 教授
英文学科/2000年
2020/01/01 時点
プロフィール
英文学科卒業後、文学研究科に進学、英語学コースにて修士号・博士号(文学)修得。英文学科助手を務めたのち、筑波大学で5年間助教として勤務し、2012年より東北大学で准教授として勤務(2020年4月より異動の予定)。2019~2020年、オハイオ州立大学言語学科visiting scholar。研究分野は、広くいえば言語学・英語学、狭くいえば形態論・語形成論。英語の語形成を論じた著書Conversion and Back-Formation in English (Kaitakusha, Tokyo,2008)にて市河賞受賞。論文をEnglish Linguistics, English Language and Linguistics,English Studies, Journal of Linguistics, Word Structureなどの学術雑誌で発表。
メッセージ
私が行っている言語学の研究は、ことばの文法の解明です。英語をデータにした言語学ですので「英語学」ですが、現在滞在しているオハイオ州立大学では世界の様々な言語について文法の解明が行われています。
島村礼子教授(現名誉教授)のご指導のもと、津田塾の英語学コースで学んだのは「事実と理論の往復」という科学の基本です。例えば、『リーダーズ英和辞典』(研究社)。英単語と関連情報にあふれた、英語好きにはこたえられない辞書ですが、このように情報を集めただけでは科学にはなりません。情報のなかに何らかの規則を見出し、その規則が成立する範囲を確定するという作業を経て、科学的研究が生まれてきます。
雑多な事実のなかから一般規則を取り出すのは、いかにも苦しいのと同時に、他では得られない純粋な喜びを与えてくれます。オハイオ州立大で取り組んでいる課題も、いまはまだ、寝ていても考え続け、起きた時点で脳内疲労、というありさまですが、いつか必ずシンプルで美しい論理構造を取り出せると信じてデータを集めています。
津田塾のすばらしさは、こういうタイプの人間でも居心地よく過ごせるという点ではないかと思います。今でもよく覚えていますが、1年次の初修外国語としてのフランス語の授業で、「受動文では過去分詞が主語と一致する」(例:La décision est très appréciée (de tout le monde).)と教わりました。他日、今度は、「avoirの複合過去形では、過去分詞が目的語代名詞と一致する」(例:Il a envoyé cette lettre. → Je l'a envoyée.)と教わりました。ただ、どうもすっきりせず、これら2つの事項は、「目的語が動詞より前に来たら、動詞との一致を引き起こす」とまとめればいいのではないか。そのように理解するともやもやが解消されましたし、ありがたいことに、こういう話に喜んでつきあってくれる友人や先生がいました。
あまりの居心地の良さに、普通の学生の3倍、12年ほどお世話になりました。緑あふれる美しいキャンパスで、静かに、自由に、のびのびと過ごさせてもらったことは、研究者としてのその後の力になっていると実感しています。