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2024/07/30
井藤 明子
株式会社目の眼
代表取締役社長
国際関係学科/1996年
2024/07/30 時点
プロフィール
1996 年 3 月に国際関係学科を卒業後、福井県立音楽堂と東京・トッパンホールに在籍し、クラシックコンサートを中心とした音楽事業の企画制作に従事。その後、株式会社サントリーパブリシティサービスで公立文化施設の事業責任者、国立音楽大学で公演事業責任者を務め、20 年以上にわたり音楽を通して芸術文化と社会を繋ぐ仕事に注力している。2016 年以降はその領域を広げ、英国のオークション会社で美術品競売のキャリアを積み、2023 年 2 月、骨董・古美術の出版メディアの株式会社目の眼の代表取締役社長に就任。2020 年から洗足学園音楽大学講師も務める。
ホームページ https://menomeonline.com
メッセージ
自分のキャリアについて聞かれた際、「クラシック音楽や古美術といった芸術の愉しみを、より多くの人へ伝える仕事をしています」と説明していますが、在学中は就きたい仕事や会社が明確にあったわけではなく、それを見つけることができませんでした。また社会に出てからキャリアや年齢を積み重ねるにつれ、自分のやりたいこと・やるべき仕事は何だろう......と考えることが何度かあり、その時々で転職を繰り返し、現在は骨董・古美術に特化した出版メディアの代表を務めています。
20年以上にわたりコンサート制作に関わってきたので、なぜ音楽業界から古美術業界・出版業界へキャリアシフトしたのか?といった問いを受けることもありますが、実は私にとっては、音楽か美術かといったジャンル(業界)はさほど重要ではないことに気づきました。
芸術文化というのは人の営みから生まれるものであって、社会や経済の動きと密接に繋がっています。またその背景には歴史や哲学、人の心理が広がっています。それに気づいたとき、学生時代に学んだ講義やゼミの先生の言葉、紹介していただいた哲学書や文化社会学の書籍を思いだしました。学生の頃のばらばらだった好奇心のかけらが、今の自分のキャリアに繋がっているのだと、はっとしました。現在は、作品やアーティストと、それを愛でる人々を繋ぎ、壮大で奥深い芸術文化の愉しみを社会に伝えていくことが、私自身のやるべき仕事だと意識し、精進していきたいと感じています。
年齢に関わらず、自分自身を知ることは難しく悩むことばかりですが、それを探し続けるからこそ、「これだ」と思えるものを見つけたときには挑戦しがいがあるのではないかとも思います。そして、そんな迷う私にアドバイスや励ましをくれるのが、津田塾を卒業された先輩や後輩との出会いや、入学時からの友達の存在です。音楽・美術業界にいる卒業生は他の業界と比べると少ないですが、だからこそ、出会えたときにはとても心強く、前に進む勇気をもらえます。また、とくに同じ学生寮で一緒に過ごした友達とは今も時々連絡をとりあい、プライベートから仕事や家庭の話まで近況を報告しあうたびに元気をもらっています。
学生時代の学びや好奇心が、社会に出て思わぬときに皆さんの人生に結びつき、前に進むヒントになるはずです。どうぞ今の経験や感覚を大切になさってください。